ドナー

患者さんの病気や治療効果などにより、優先順位は異なります。

当院では、下記の順番としています。

  1. HLAマッチの血縁ドナー
  2. HLAマッチのバンクドナー
  3. HLAが2つ以上異なる血縁ドナー/臍帯血/HLAが1つ異なるバンクドナー

ドナーさんは誰でも良いわけではなく、患者さんとHLA(ヒト白血球抗原:自分と自分以外を見分ける目印のようなもの)をある程度一致させる必要があります。ドナーさんから造血幹細胞を採取するには、骨髄採取と末梢血幹細胞採取の2通りの方法があります。採取にはそれぞれリスクがある為、よく話を聞いた上で提供するかどうかを決めてください。

HLA型は、両親から半分ずつを遺伝的に受け継ぐため、兄弟姉妹間では4分の1の確率で完全に一致します。HLA型が一致しない造血幹細胞移植は、拒絶反応や重症の移植片対宿主病(GVHD)などの副作用が起こります。

HLA検査は、血液を2ml程度採血させていただきます。(遠方に居住されている場合などには、口の中の粘膜を採取して行うスワブ法もあります。)検査の結果が出るまでに約2週間かかります。なお、HLA検査は移植をするまで保険適応がありません。そのため、検査費用(施設によって値段が異なります。)が発生します。移植を行った場合、患者さんとドナーさんの2名分のHLA費用は返金されます。

画像:同種造血幹細胞移植ドナーの必要条件
  1. 骨髄採取のスケジュール

    一般的に、骨髄採取は患者さんの移植日に行います。採取前日に入院し、入院期間は4日間です。採取前後の健康診断や自己血などの準備のために、採取日より約1ヶ月前から約3~5回の通院が必要です。

    画像:骨髄採取のながれ

  2. 骨髄採取の方法
    画像:骨髄採取
    骨髄採取は、左右の腸骨(骨盤の骨)から鉛筆の芯より少し太い針を用いて行います。約1リットル(患者さんの体重×15mlを目安にして、細胞数に応じて増減)の骨髄液を採取します。皮膚には数か所から数十か所の跡になります。そのまま採取すると痛みがありますので、手術室で全身麻酔(口から気管に管を入れます)をして行います。手術時間は1~2時間ぐらいです。また、骨髄採取時の貧血を補うために、骨髄採取の約3週間前と約1週間前に自己血を約400mlずつ採血し、保存させていただき、採取当日に手術室で戻します(自己血輸血)。採取後は軽い痛みがしばらく残る場合もありますが、月曜日にはほとんどの方が日常生活に戻っています。また、血液の状態は1ヶ月ぐらいで元に戻り、骨に刺した針穴は半年〜1年で元に戻ります。
  3. 合併症
    一般的に全身麻酔に伴う合併症は、1~5万件に1件の確率で重大な合併症が発生すると言われています。特に悪性高熱症は命に関わる場合もあります。術後の咽頭痛,採取部腰痛は多くの方に見られ、軽度の肝障害等が一過性にみられることもあります。また、椎間板ヘルニアや頸椎ヘルニアがある方は、悪化する可能性があります。その他、ドナーの方にウイルス肝炎が発症したという報告や骨盤内に大量の出血が起こったという合併症が報告されています。過去に5名のドナーさんが亡くなっています。
  1. 末梢血幹細胞採取のスケジュール

    注射を投与する日もしくは採取前日に入院し、入院期間は約3~6日間です。採取前後の健康診断と採取日より3~4日前に連日注射を行いますので、約3~6回の通院が必要です。

    画像:末梢血管細胞採取のながれ

  2. 末梢血幹細胞の方法
    末梢血幹細胞採取は、ドナーさんに白血球を増やす薬G-CSF(もともとは体の中にある物質です)を1日1〜2回皮下注射し、幹細胞が末梢血中に増えてくる4〜5日目頃に、血液成分採血装置(日赤で成分献血をされる場合に使用する機械)を用いて行います。採取する時は、左右1本ずつ、計2本の肘静脈に少し太めの針を刺して行います。但し血管が細い方は、鼠径部(足の付け根のあたり)の静脈にカテーテルを挿入させていただく場合もあります。血液成分分離装置で造血幹細胞を集め、その他の血液は、ドナーさんに戻されます。のべ10リットルぐらいの血液を処理し、最終的に各200mlの造血幹細胞をいただきます。時間は約4〜5時間かかります。入院期間は約3〜6日間です(注射を通院で行うか、入院で行うかで違いがあります)。
  3. 合併症
    G-CSFの注射に伴う副作用として、多くの方で一過性の骨痛がみられます。また、肝障害など検査値異常や発熱、不眠、呼吸困難感等みられることがあります。重篤なものとしては、極めて稀ですが、脾臓破裂や脳梗塞(高齢者の場合)が報告されています。次に、採取中には、迷走神経反射や血液が固まらないようにクエン酸を使用することで、一時的に手足のしびれや倦怠感が生じる場合がありますが、薬の副作用であり後遺症となるものではありません(カルシウムの点滴で軽快します。)
    世界では12名のドナーさんが亡くなっています。

ドナーさんに何らかの後遺障害が生じた場合や提供に伴い予定外の入院や通院が必要な場合に補償されるドナー団体傷害保険があります。健康状態により加入条件があり、掛け金は自己負担となります。 また、ドナー自ら採取前より任意で加入されている生命保険などで、ドナーを対象として補償を取り扱っている場合があります。加入している保険があれば、保険会社にお問い合わせください。

骨髄採取と末梢血幹細胞採取の違い

ドナー 骨髄採取 末梢血幹細胞採取
全身麻酔 必要 不要
自己血採血 必要 不要
G-CSF注射 不要 必要
入院期間 通常3泊4日 注射は外来通院の場合:2泊3日~3泊4日
注射初日から入院の場合:4泊5日~6泊7日
病院への来院回数 6回前後 注射は外来通院の場合:8回前後
注射初日から入院の場合:4回前後
日常生活への回復 痛みなど個人差があるが1~7日 骨髄採取に比べて早い
参考文献「JSHCT:HP、日本骨髄バンク:ハンドブック、ノバルティスファーマ:ICサポートライブラリ⑤」
画像:コーディネートのながれ
  1. 骨髄バンクドナー
    血縁者にドナーがいない場合、日本骨髄バンクに登録を行い、非血縁ドナーからの移植が検討されます。非血縁ドナーは、血縁ドナーと違い「ドナーの善意で提供していただいた健康な骨髄や末梢血幹細胞の移植によって、白血病などの治療が困難な血液疾患の患者さんを広く公平に救うこと」を目的としており、患者とドナーはお互いの情報は知らされません。また、ドナーの自発的な意思を尊重し、健康と安全が優先されます。手続きは全て医師を通し、ドナーのコーディネートは日本骨髄バンクを介して行われます。登録をしてから移植をするまで、約3~6ヶ月要します。一連のコーディネートにおいて、検査費用や調整料など負担金がかかります。 引用資料「日本骨髄バンクHP:https://www.jmdp.or.jp/recipient/flow/cordinate.html
  2. 臍帯血バンクドナー
    臍(さい)帯血ドナーとは、出産時にへその緒や胎盤に含まれている造血幹細胞を採取したもので、全国6ヵ所の公的さい帯血バンクから提供されます。血縁者や骨髄バンクにもドナー候補となる方がいない場合や、ドナーを探す期間の猶予が無い場合は、臍帯血移植が検討されます。
    長所 短所
    1~2個HLAが不適合の移植が可能 生着不全の頻度が高い
    準備期間が短いため、迅速な移植が可能 造血回復が遅い
    参考文献「協和発酵キリン:造血幹細胞移植を受けるみなさまへ」